エマルション
エマルション液滴の粒子サイズとゼータ電位は、エマルションの安定性に影響を与える重要な物理的特性です。
エマルションは、通常、混和しない液体からなる 2 相分散液です。一般的な例として、水中の油滴やオイル中の水滴が挙げられます。エマルション液滴の粒子サイズとゼータ電位は、エマルションの安定性に影響を与える重要な物理的特性です。
液滴サイズは、Nicomp® (ナイコンプ) DLS システムや AccuSizer® (アキュサイザー) SPOS システムで測定できます。ナイコンプ システムは製剤時のゼータ電位も測定できるので、界面化学および分散の安定性を最適化できます。
アキュサイザーは、USP <729> メソッド 2 試験に準拠した脂質注射用エマルション (全非経口栄養剤、または TPN)、および清涼飲料水用香料のエマルション液滴サイズの測定に幅広く使用されています。
エマルションの安定性と USP <729>
エマルションは通常、互いに混ざり合わない 2 液かそれ以上の液体で構成され、液滴形態の一方の液 (分散相) が、もう一方の液 (連続相) の中に分散しています。
各液滴の表面は親水性分子と疎水性分子の界面であるため、熱力学的に不安定です。また、エマルションの安定性は、保存方法 (ガラスとプラスチック)、時間、温度などの多くの外的要因にも影響されます。光散乱技術は、エマルションの粒度分布を測定するための標準的な手法です。不安定になったエマルションでは、光散乱法で見た平均粒子径が変化します。しかし、これらの手法では、不安定化の原因となる粒子の大きさや量を決定することができません。
この詳細情報は、注入用の脂肪乳剤を扱う際に非常に重要になります。静注用脂肪乳剤 (IVLE) 中の脂肪小球が合体すると、直径 4 µm から 9 µm の微小血管と、直径 20 µm までの大血管で肺塞栓を生じさせることがあります。そこで米国薬局方には、 USP <788> および <729> のような多数の粒子径決定手順が記載されています。 USP <729> では、平均液滴サイズだけでなく、大径液滴テール部の量 (> 5 µm) を決定することが要求されます。PFAT5 の体積加重比率 (5 µm を超える脂肪の比率) が 0.05 % を超えないことが求められます。

アキュサイザーシステムで測定した熱ストレスを 0 〜 40 時間かけた脂質エマルションの液滴サイズ分布
エマルション中の PFAT5 を判定するためには、SPOS などの単一粒子測定技術が必要です。アキュサイザーシリーズは長年にわたり、この測定のための最高の測定器として選ばれてきました。上の図は、時間の経過とともに不安定化が進むエマルションの体積加重分布による分散を示しています。
エマルション安定性の予測
粒度分析は、あらゆる種類の医薬品の安全性と有効性を確保する上で、常に重要な役割を果たしてきました。
米国薬局方には USP <788> や USP <729> など、薬物安全性に留意したいくつもの粒度測定手順が含まれています。USP <729> では、液滴の平均粒子サイズと粗大液滴 (> 5 µm) のテール部の割合を判定することが求められています。従来、平均液滴サイズの決定には動的光散乱法などの方法が用いられ、液滴テール部の解析には光遮蔽法が用いられてきました。集光ビームを利用した光遮蔽法の FX-Nano システムを用いることで、平均径と大径液滴のテール部の両方を 1 つの特性評価手法で決定できることが分かりました。FX-Nano システムは USP <729> の要件を満たすであろう初めての機器です。
この新しい集光型光遮蔽技術は、SPOS 技術の下限を 0.5 µm から 0.15 µm まで拡張し、一次粒子径分布を定義し、医薬品エマルションのテール部の定量情報を提供することが可能になりました。さらに、検出ビームを先端に集光させることにより、最大 106 個/mL の濃度で粒子のサイズと個数を測定できるようになりました。現在、この両方の情報を提供できる技術は他にありません。この研究では、集光ビームシステムを用いて、エマルションの一次分布と液滴テール部をカウントしてサイズを決定し、USP <729> に従ってエマルションを判別しています。

図 A
図 A は、TPN に対する FX-Nano システム の典型的なヒストグラム結果を示しています。液滴の平均粒子サイズだけではなく、液滴のテール部も判定されました。

図 B
図 B は、平均粒子径が 0.3 µm から 0.35 µm の 3 つの TPN を比較したものです。このデータから、エマルションの不安定度を予測することができます。試料 LN は、エマルションの合体による粗大粒子の増加をはっきり示しています。
ソフトドリンクのエマルション
ボトルに入った清涼飲料水の製造に使用される香料エマルションは、凝集やオストワルド熟成を防ぐのに十分に小さい均一な液滴から構成されていなければなりません。どちらも乳液の「分離」や見た目上望ましくないボトル内の「ネックリング」が形成される可能性があります。ネックリングの形成はゆっくりと進むため、早期発見が可能です。
エマルション液滴サイズ測定の技術
乳化香料の液滴サイズ分布の測定は、相分離とネックリング形成を回避するために使用される予測判断材料の 1 つです。エマルションの液滴サイズ測定に使用可能なさまざまな技術の中でも、光学的粒子検出 (SPOS) はエマルション分布のテール部にあるサイズガ大きな外れ値の粒子の存在を検出できる唯一の技術です。
ソフトドリンクに使用されるいくつかの乳化香料の液滴サイズ分布を図に示します。サイズが大きな粒子の量と粒子径に、明らかな違いがあります。1 µm を超える大きさの粒子の比率を使用して、ソフトドリンクに使用される乳剤品質を定量化し、最終的なネックリングの存在を予測することができます。アキュサイザー A2000 システムは、世界中の研究室でこうした乳化香料の液滴サイズ判定に使用されています。

清涼飲料の香料エマルションの液滴サイズ分布